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  • 執筆者の写真Kiyoe.Shimura

【感謝のご報告】樹木希林さんへそしてみな様へ。「さよならの先」(講談社文庫)重版(四刷)になりました。


【感謝のご報告】

樹木希林さんへ そしてみな様へ。

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今回は帯を書いて下さった樹木希林さんとのやり取りのいくつかをご紹介させていただこうと思う。


この本の帯は樹木希林さんに書いて頂いた。出来立ての原稿を真っ先に読みたいと仰りご自宅に届け、翌々日には連絡が入った。


「すごくいいよ!二回読んだよ。よく書いたね」と私の背中や肩や頭を撫で回し、今までの人生で誰かにこんなに褒められたことあったかな?と思うほど、抱きしめられ撫でられ、まるで母親に認めてもらえた子どものように無邪気にうれしかった。

しかし同時に痛みも感じた。当時を振り返ると、樹木さんは本の中に登場する人たちの生き様と死に向き合う姿をご自身に重ねていたのではなかったかと思う。


「さよならの先」を書き上げるにはずいぶん時間を要した。ダイアログ・イン・ザ・ダークの活動とターミナルケアの両立。書こうにも時間がなく、なぜ引き受けたのかと後悔もした。


ある日、いつものように樹木さんの御宅の和室、枯れ蓮の襖絵の前でお話をした。笑い話の途中どういう理由だったか忘れたが、執筆の進み具合を尋ねられ、全く書いていないと答えると「ねぇ、季世恵さん、全身癌って聞いたことある?私、それに移行しているように思う。ここら辺がねピリピリするのよ。こんな感覚初めて。何かが動いているんだよ。普通の痒いとか痛いとはまた違う痛み。熱しているような痛み。私はミリ単位で死に向かって進んでいる。だから早く書いた方がいいよ。読めないかもしれないから」と。


感覚の鋭い人だった。


病院の検査では主だったところに癌はないということだったが私は不安になった。樹木さんの体の中に潜む破壊的な力。気の利いた言葉など出てこず、その部位に私の手を当て2人で息を凝らした。


翌年樹木さんの予想通り全身癌が分かった。


樹木さんは死生観を深めることで、より一層生きることを深めることが出来ると仰った。それは丁寧な暮らし方にも反映されていたのだろうと思う。

この本の中に出てくる人たちも同じことを仰っていた。


喪失の経験は、生きる上で必要なとても大切なことに気付く。それはシンプルな幸せ。幸せは豪華なものではなく至って質素なのだ。


病気になる前に、元気なときに、これを知れたらずいぶん世の中は平和になると思う。樹木さんは「元気なときは複雑な思考を持ち、たいていは幸せな考えに至らない」と仰った。

樹木さんにお聞きしてみた。「どうしたらそれに気付くことができるかしら?」

「分からない。でもあなたの書いた本を私は買って人に伝えるよ」と。 「さよならの先」には、いのちの本質を見つめ生き抜いた人の言葉が詰まっている。

樹木さんは「みんな うまーく死んでいく 心の置きどこを変えこんなに浄化して」と綴ってくれたが、うまく死ぬ前にうまく生きれたらいいのにと心から思う。


樹木希林さんの死は日本中に影響を及ぼし、彼女の紡いだ言葉を欲する人は大勢いる。

今、日本人が心底求めているのは、いのちを感じ自分を偽らない生き方なのだろう。

私は当時、お看取りした人たちの想いや気づきを代弁するような気持ちで書いた。

自身に置き換えた樹木さんの帯の言葉はより深いのだと思う。


志村季世恵


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